干支と聞くと、やはり思い浮かぶのは戌年・巳年などの動物たちだと思います。
しかし、なぜその動物たちが選ばれたのか、その理由や物語を知る人は多く
ありません。
ここでは、十二支に選ばれた動物たちが持つ「意味」を、季節にあてはめて
ご紹介していきます。
そもそも「干支」とは何か
干支という言葉は知っていても、それが何を意味するのかについてご存知ない
という方も多いのではないでしょうか。
実は、干支という概念は、もともと中国からやって来たものだったのです。
干支の正式名称は「十干十二支(じっかんじゅうにし)」
そもそも、干支という概念が生活に取り入れられるようになった理由は、
年月日・時間・方角といった情報を分かりやすくまとめるためのものです。
1カ月を10日×3週(上旬・中旬・下旬)に分けるための考え方である「十干」と、
太陽系の木星の運行を12カ月として区分した「十二支」の、
最後の二文字を合わせて「干支」としました。
十干は
甲(こう)・乙(おつ)・丙(へい)・丁(てい)・戊(ぼ)・己(き)・庚(こう)・
辛(しん)・壬(じん)・癸(き)
の10種類があります。
十二支は知っていることが多い
子(ね)・丑(うし)・寅(とら)・卯(う)・辰(たつ)・巳(み)・午(うま)・
未(ひつじ)・申(さる)・酉(とり)・戌(いぬ)・亥(い)
の12種類です。
これらを組み合わせていくと、甲子(きのえね)・乙丑(きのとうし)・・・
といったように、組み合わせが生まれていき、最終的に60種類の組み合わせが
完了したところで最初の甲子に戻るという流れです。
中国においてはカレンダーとして使われていた
2018年度・2017年度といったように、日本でも毎年カレンダーが販売されます
が、干支は古代中国におけるカレンダーの役割を果たしていました。
紀元前1,400年ころ、殷(いん)王朝で用いられていた形跡があり、古代文字で
ある甲骨文字(こうこつもじ)にて日付を記録していたと言われています。
年月日や時間・方角を示す意味合いがあることから、時の権力者によってさまざ
まな角度から応用され、風水や気学などといった現代までその歴史が連綿と
続く占いなどにも、そのルーツを見ることができます。
日本で応用されるようになったのは推古天皇の時代から
紀元前の時代から用いられてきた干支ですが、日本で利用されるようになった
のはいつ頃からなのでしょうか。
日本書紀においては、553年ころに百済(くだら)の国で歴書を求めたという
記述がありますが、実際に概念を運用したのは604年以降と言われています。
時の天皇は初の女性天皇である推古天皇(すいこてんのう)であり、これ以降、
年の干支によって出来事を示す習慣が定着しました。
後の天武天皇となる大海人皇子が反乱を起こした「壬申の乱」や、明治政府と旧幕
府軍とが戦った「戊辰戦争」のように、出来事が起こった年を示すために
干支を用いています。
干支における十二支の意味
先ほどご紹介したとおり、十二支自体は12カ月を表すための概念でした。
しかし現代においては、どちらかというと十二支を示す動物の方が有名に
なっています。
それぞれの動物に由来する意味になぞらえ、年の吉凶や生まれ年の性格・運勢を
紐解くような傾向も見られます。
例えば、戌年生まれの人は誠実な性格をしている、巳年の人はお金に困らない・・・
といったような内容です。
果たして、十二支に動物があてはめられたことには、何か深い意味があるので
しょうか。
動物があてはめられた意味
「動物があてはめられた意味は「一覧で分かりやすく紹介するため」
実は、十二支と動物には、古代から直接的な関係性があったわけではありません。
一般庶民にその概念を普及させるため、後漢時代の王充(おうじゅう・おういつ)
が抽象的な数を動物という具体性のあるものにあてはめたのがルーツです。
とはいえ、何かをあてはめるにしても、それ相応の意味があった方が民衆も
分かりやすいはずです。
干支の概念が広まった各国では、なぜ動物が選ばれたのかについて分かりやすく
理解させるため、さまざまな物語が生み出されました。
日本の福島では、以下のような物語が伝わっています。
【物語】
昔々の大昔のある年の暮れ、神様が動物たちにお触れを出しました。
「元日の朝、新年の挨拶に出かけよ。
あいさつに来た順に、一番目から十二番目の者までは、おのおの一年間、動物の
大将にしてやろう」
動物たちは、自分が一番になろうとして、元日を心待ちにしていました。
そんな折、猫は神様のところにいつ行くのかを忘れてしまいました。
そこでねずみに訊いてみると、ずるがしこいねずみはわざと一日遅れの日を
教えました。猫はねずみが教えたことを聞き、喜んで帰っていきました。
さて、いよいよ元日になりました。
牛は「ぼくは歩くのが遅いから、ほかのみんなよりも一足早く出かけよう」と思い、
夜のうちから準備して、暗い中出発しました。
牛小屋の天井でこれを見ていたねずみは、ぽんと牛の背中に飛び乗りました。
牛がこれに気付かないまま、神様のおやしろに近付いてみると、まだ誰も
来ていません。
牛が自分が一番だと喜んで待っていると、門が開きました。
すると、とたんに牛の背中からねずみが飛び降り、ちょろちょろっと走って一番に
なってしまいました。
こうして、牛は二番、それから虎、兎、龍、蛇、馬、羊、猿、鶏、犬、猪の順で
着きました。
猫は一日遅れで行ったので、番外で仲間に入れませんでした。
猫はうそを教えたねずみを恨み、今でもねずみを追い回すのだそうです。
国によって寓話の内容は微妙に異なり、一例を挙げるとベトナムではうさぎの
代わりに猫が干支に選ばれており、猫年があるそうです。
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それぞれの動物があてはめられた意味
それでは、なぜねずみやうしなどの動物が、十二支としてあてはめるのに都合が
良かったのでしょうか。
考察すると、十二支それぞれの動物が持つ性質が、十二支の季節と関連して
いるものと考えられそうです。
五行について書かれた文献「五行大義」や、陰陽学について書かれた「万暦大成」
などから、その詳細を紐解いていきましょう。
子(ねずみ)
冬の静止した時期に、かすかに物事が動き出す時期です。
草木が地中から芽を出しはじめる状態が、小さく
元気に動き回るねずみに例えられています。
子どもがたくさん増える状況を、芽吹きになぞらえて
いるものと思われます。
丑(うし)
まさにこれから大きな春の気が動き出そうとする待機
の時。しかしまだ冬の構えが残っています。
強い力を持ちつつのんびりと構える牛が、この気を例
えるのに適していたものと思われます。
寅(とら)
さまざまなことが盛んになり、春の気が訪れる時期です。
そもそも「寅」という漢字には、伸ばし建てるの意味が
あります。
猛々しい活発な気が、虎に当てはめられたものと思わ
れます。
卯(うさぎ)
春の真っただ中であり、植物が大いに伸びる時期です。
盛んに植物が茂る状況を、飛び跳ねる兎に当て
はめたものと思われます。
辰(りゅう)
春と夏の境目にあたる時期で、寅・卯の気に比べると
巨大な気が震え動き出す時期です。
広範囲に及ぶため、龍という巨大な生き物に似せた
ものと考えられます。
現代では唯一、想像上の生物であることも、この時期
の力強さを示せる動物がいなかったことを表している
と思われます。
巳(へび)
本来「巳」には「とどまる・やめる」という意味があります。
季節が夏を迎え、動きや成長がとどまる状況を指しています。
ここから冬に向けて気の移り変わりがあるため、脱皮を
繰り返す(生まれ変わりの象徴となる)蛇があてがわれ
たものと思われます。
午(うま)
さまざまなものが夏の陽気の中で大きく育ちますが、
その中に成長の滞りも兆しはじめます。
牛も馬も大きな動物ですが、牛が力を蓄えるのに対し、
馬は元気よく走るイメージです。
しかし、馬は非常に繊細な生き物であり、家畜としては
比較的体調を崩しやすい動物でもあります。
このような個性が、隠れた繊細な部分を示すものとして
あてはめられたのではないでしょうか。
未(ひつじ)
万物が成熟に向かい、匂い・味が備わる時期です。
いわゆる秋のはじめであり、やがて来る成熟のときを
迎えます。
羊は群れで暮らし、家畜としても有益であることから、
家族の安泰や落ち着いた暮らしぶりをあてはめるの
に適していたものと考えられます。
申(さる)
成長がとまったことで植物の成熟が増す時期です。
もう少しで果実が収穫できるというところ。
猿は山で暮らす動物であり、古代には神の使いとも
されてきた時代があります。
そう遠くない未来における豊穣を願い、あてはめられた
動物と言えるかもしれません。
酉(とり)
万物が老い極まり、成熟する時期です。
穀物・果実などの収穫時期にあたります。
鶏は「取り込む」に通じ、商売繁盛を意味する動物です。
夜明けを知らせ鳴く鶏を、古代中国においては特に
神聖視していました。
このような能力から、時期を知らせる生き物として、
あてはめられたものと考えらえます。
戌(いぬ)
秋と冬の境目にあたり、すべてのものが滅び始める
時期です。
秋に収穫したものを守るため、社会性に富み人間と
共存できる犬を、この時期にあてはめたものと
思われます。
現代でも番犬とされるように、その忠誠心は多くの
物語を生んでいます。
亥(い)
草木は全て枯れ、根だけが残った状態を指しています。
猪は強い動物で、70kgを越える体で時速45kmの
スピードを出すことができます。
すなわち、体の中に大きな力を溜め込んでいる動物
とも言えます。
古代中国では、植物が持つ強い根を、猪にあてはめて
考えていたのかもしれません。
十二支とその動物たちについて、由来や考察・物語についてご紹介してきました。
厳密に動物をあてはめた理由が書かれた書籍は少ないですが、動物それぞれ
の生活に由来する可能性は高く、時代や国によってあてがわれた理由も
異なります。
紐解くと思いのほかロマンはありませんでしたが、性格占いで用いられている
イメージよりも、より現実に即したものとして考えられていたのかもしれませんね。