桜餅を思いだす時に関東と関西とでは思い浮かべる桜餅が違うようです。
桜の季節に食べる「桜餅」関東では
関西では
共通点は「葉と小豆あん」を使っている事、違いは小豆あんを「包む材料・包み方」
包む材料の違い
関東と関西で包む材料が違った事には、
場所によって「手に入りやすい材料」「受け入れやすい姿や味」等があったようです。
道明寺
和菓子になる桜餅、和菓子が作られたのは京都、和菓子は京都から各地域に伝わり
ます。京都の隣、大阪の藤井寺市と言う場所に道明寺と言うお寺があります。
道明寺は出家した女性がいる尼寺になり、道明寺には菅原道真公の伯母がいました。
菅原道真公の伯母が保存食・携帯食としてご飯を乾燥させた物を作り、やがてご飯は
もち米を乾燥させた物になります。
ご飯を乾かし乾燥させた物の意味になる「糒(ほしい)」と寺の名前を合わせて
もち米を乾燥させた物を「道明寺糒」として良く食べられるようになります。
◎「道明寺」と「和菓子」
和菓子職人は「道明寺糒」で和菓子を作るようになり「道明寺」「道明寺餅」と言う
和菓子が生まれます。素材の「道明寺糒」も和菓子のイメージに合う「道明寺粉」と
呼ばれるようになります。
道明寺には桜もあり、お花見の季節なるとみんなが訪れる場所、楽しませてくれる場
所になるのですが格式のあるお寺になる事から道明寺ではお寺に咲く桜、道明寺桜を
前に出す事はなかったと言う事です。
道明寺の周りには道明寺(和菓子)を名物にしているお店はありません。
道明寺は道明寺餅とも言われ
皮の材料はもち米
形は丸い・扁平 皮には粒がある
小豆あんは粒あん
桜の葉を1枚(3枚まで)
長命寺
和菓子や道明寺は関東にも伝わります。関東で長命寺の方が道明寺より有名になった
のは江戸時代、人口が最も多くなった江戸で流行ったのが「長命寺」になります。
江戸で流行った事から桜餅は「長命寺」を指し、長命寺を「桜餅」と呼ぶようになり
ます。
「製菓衛生師全書」の中で江戸中期の文献に長命寺が「桜餅」だと書かれており
長命寺というお寺の門番をしていた山本新六さんという人が、たくさん散る桜の葉に
悩まされその葉を塩漬けにし包んで販売したのが始まりだと言われています。
山本新六さんのお店は現在も「山本や」として東京で営業しています。
☞向島 長命寺 桜もち
長命寺はもち米ではなく小麦粉を水で溶いて焼いた物になります。小麦粉を水で溶き
平らにして焼く食べ方は古くから食べられる食べ方です。そこに小豆あんと塩漬けし
た桜の葉巻いた所、江戸で瞬く間に広がります。
長命寺は
皮の主な材料は小麦粉
形は主に筒型、皮は平
小豆あんはこしあん
桜の葉を1枚(3枚まで)
江戸時代には「いき」と言うものがあり、江戸独自の物を好み、見た目、隠された手
間がとても重要でした。
目に見えない手間になる小豆あんは滑らかなこしあん、塩漬けされた葉、平たい皮
手間暇はかかっているのにすっきりとした長命寺は、江戸の人達にぴったりな和菓子
であったようです。
道明寺 桜餅 長命寺
桜 餅 | ||
道明寺 | 長命寺 | |
主な皮の材料 | もち米 | 小麦粉 |
見た目 | 皮は粒がある 形は丸い・扁平 |
皮は平 形は筒型 |
小豆あん | 粒あん | こしあん |
葉の数 | 1~2枚 | 1~3枚 |
関東でも道明寺は桜餅として伝わるのですが、江戸で長命寺が流行った事で長命寺
の方が桜餅として浸透します。その事から桜の季節に食べる和菓子に「桜餅」があ
り桜餅の種類には道明寺と長命寺があります。
桜の葉
日本では葉はもともと、お皿に使ったり食べ物を包む物、食べ物の仕切りに使われ
ていました。
◎葉の効能
葉には防腐効果・殺菌効果・抗菌効果があります。
冷蔵庫のない時代、食品を出来るだけ長く保存出来るように葉を使っていました。
お寿司を乗せる時に使うヒノキ、お寿司のネタにはサワラ
柏餅に使う柏、粽(ちまき)やおにぎり等にはササ等
季節で手に入りやすい葉、いつでも手に入りやすい葉、葉の育ち方等で葉を選び
桜の季節には桜の葉を使うようになります。
桜の葉にも抗菌効果があ、何と言っても印象的な香りがある事で春に食べる特別
な和菓子を感じる事が出来ます。
◎桜餅の葉
桜餅は他の和菓子と違い基本的には葉を食べてる事が出来ます。
スーパー 百貨店 コンビニエンスストアで販売されている桜餅は、ほとんどの場
合葉を食べる事が出来るのですが、葉は食べない方が美味しいように作られている
場合もあります。食べる時には確認する事をおすすめします。
桜餅に使われている葉は産毛少なく柔らかい大島桜の若葉が使われています。
大島桜の若葉以外では作れないかと言うとそうではなく、どの桜でも作る事は出来
ます。
桜の花と葉には独特の香りがあり、葉の方が強く感じます。その葉を長く保存出来
るようにする事が多い「塩漬け」にすると甘い香り、いつも感じる桜の香りに変わ
ります。
葉の香りは抗菌作用だけではなく、リラックス効果、鎮静効果もありアロマオイル
にも使われています。
「春の季節」「桜」、和菓子には餅・小豆あん・桜の葉の「桜餅」「葉の香り」
これ以上ないくらいぴったりな組み合わせです。
現在では関西・関東でも道明寺・長命寺は春の季節に「桜餅」として販売されています。